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巻頭言
医学教育と学生の間
著者: 柴田洋子1
所属機関: 1東邦大学医学部精神神経科学教室
ページ範囲:P.236 - P.237
文献購入ページに移動 1978年の9月,わが大学医学部において,教授会をあげての2日間にわたる「医学教育ワークショップ」が行なわれた。外来の講師としては,東京工大の坂元昂教授(テーマ「授業計画法」),筑波大の堀原一教授(テーマ「教育評価」)の2人であった。前段の「授業計画」においては,「現代の教育工学」の立場から,教育の大筋として次の3点が冒頭に掲げられた。
1.夾雑物で見えなくなっているものを見えるようにすること。
2.Expertはすでに自身が一定方向に形作られているので白紙の状態(すなわち学生)の視点がわからない。その点をふりかえる必要がある。
3.教材提示の手順によって学生の理解度が異なるので,その点を再考する必要がある。
その他細かい点をここに述べるつもりはないが,すべて合理的な論旨の展開であった。しかしながら,聴き終ってから何故かじわじわと私には不安が起こり,「教育工学」なるものの発展の背景について質問した。回答は3つのポイントであった――①大学生が増えたので学力下位の者の一斉の向上をはからなければならない,②生涯教育のニードにこたえるためである,③教師の不足を補う方法の考案をぜまられているのである――。それもまたもっともなことである。しかしなお私の中に不安は残った。あらゆる科学や技術の発展は人類に福祉をもたらしているものの,他方においていわゆる公害をもたらしている。ここで強調されている「教育工学」が,果して学生の心にひずみをもたらす「教育公害」を生じないであろうか。
1.夾雑物で見えなくなっているものを見えるようにすること。
2.Expertはすでに自身が一定方向に形作られているので白紙の状態(すなわち学生)の視点がわからない。その点をふりかえる必要がある。
3.教材提示の手順によって学生の理解度が異なるので,その点を再考する必要がある。
その他細かい点をここに述べるつもりはないが,すべて合理的な論旨の展開であった。しかしながら,聴き終ってから何故かじわじわと私には不安が起こり,「教育工学」なるものの発展の背景について質問した。回答は3つのポイントであった――①大学生が増えたので学力下位の者の一斉の向上をはからなければならない,②生涯教育のニードにこたえるためである,③教師の不足を補う方法の考案をぜまられているのである――。それもまたもっともなことである。しかしなお私の中に不安は残った。あらゆる科学や技術の発展は人類に福祉をもたらしているものの,他方においていわゆる公害をもたらしている。ここで強調されている「教育工学」が,果して学生の心にひずみをもたらす「教育公害」を生じないであろうか。
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