研究と報告
精神分裂病のCTスキャンによる研究—多施設共同研究
著者:
高橋良1
佐藤時治郎2
大熊輝雄3
能代永4
島薗安雄5
稲葉穣6
加藤伸勝7
堺俊明8
西村健9
大月三郎10
稲永和豊11
藤井薫12
穐山明正1
所属機関:
1長崎大学精神神経科学教室
2弘前大学精神神経科学教室
3東北大学精神医学教室
4福島県立医科大学神経精神医学教室
5東京医科歯科大学神経精神医学教室
6東京医科歯科大学脳神経外科学教室
7京都府立医科大学精神神経科学教室
8大阪医科大学精神神経科学教室
9大阪大学精神神経科学教室
10岡山大学精神神経科学教室
11久留米大学精神神経科学教室
12大分医科大学精神神経科学教室
ページ範囲:P.251 - P.264
文献購入ページに移動
抄録 多施設共同研究により国際的に信頼性のある採用基準を用いて,同質の中核型精神分裂病280例を選定し,精神症状と臨床的,社会的背景因子及び脳CT所見の評価を行なう統制的研究を行なった結果,視察法により釣合い対照群に比較し分裂病群では有意に高率(55.0%)のCT所見の異常がみられた。脳部位では第三脳室を中心に脳室系全般と大脳縦裂,前頭葉,側頭葉,シルビウス裂の皮質系,特に左半球にCT異常がみられた。脳室拡大は年齢,罹病期間,薬物服用量とは相関せず,発病当初から存在することが推測された。皮質萎縮もこれらの経年的変化や薬物服用のみに帰することはできなかった。CT所見は車に非生産的症状と関係がみられ,特に左半球の異常と精神症状の間に著明な関係が認められた。線分法による計測結果では第三脳室の拡大のみが分裂病群に有意に高率に認められた。以上からCT所見による分裂病の亜型分類の可能性が示唆された。