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文献詳細

雑誌文献

精神医学26巻3号

1984年03月発行

文献概要

研究と報告

無動機症状群(amotivational syndrome)を呈した長期マリファナ重症使用患者の1症例

著者: 渡辺登12 諸治隆嗣1 多田幸司2

所属機関: 1(財)東京都精神医学総合研究所精神薬理部門 2日本大学医学部精神神経科教室

ページ範囲:P.291 - P.296

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 抄録 長期間大量のマリファナを喫煙し,無動機症状群と呼ばれている特異な精神症状を呈した1症例を経験したので報告する。本症例はSoueifのいうマリファナ重症使用患者であったといえる。長期間大量のマリファナ喫煙をしていた頃より,積極性の欠如や無関心,感情の平板化,言語能力の低下などの症状が出現し,喫煙中止後徐々に軽減してきた。この病像と経過は長期間大量のマリファナ使用者の16%にみられる無動機症状群ときわめて一致しており,本症例の精神症状は無動機症状群と考えられた。無動機症状群は類似した精神症状を呈する精神分裂病や器質性脳症状群と鑑別する必要があるが,本症例では対人接触が比較的円滑であること,知的能力が良く保たれ,神経学的に異常がなかったことから,本症例の精神症状はこれらの疾患によるものではないといえる。従来の報告を基に,無動機症状群の発現にはマリファナによる大脳辺縁系の機能低下が関与していると想定した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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