文献詳細
文献概要
研究と報告
カプグラ症候群に関する考察
著者: 櫻井昭夫1 清水將之1
所属機関: 1名古屋市立大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.357 - P.365
文献購入ページに移動 抄録 カプグラ症候群を中心症状として種々の治療に抵抗しながら3年間持続している36歳の1女性例を提示し,内外の既報告と対比させ検討を加えた。患者は漠然とした迫害念慮に悩む中で,先ず物体に,次いで人物に対するカプグラ症状を現わした。物体に対するカプグラ症状は本例において特徴的であり,これは患者の存在基盤が脅かされている状態の一表現と解せられ,人物に対する同症状と類似の機制で発現したものと考えられた。つまり本例におけるカプグラ妄想は直接前駆する迫害念慮による患者の被害的世界への防衛機制とも考えられ,人物に対する妄想を患者が現在の意味内容を改変しようとする来歴否認機制で理解し得た。またその際,先行する猜疑心が重要な布置となっていたことを認めた。
最後に本症の発現頻度が稀であること,性差を有することから本症の症状形成にはさらに微妙な問題が含まれている可能怪を指摘した。
最後に本症の発現頻度が稀であること,性差を有することから本症の症状形成にはさらに微妙な問題が含まれている可能怪を指摘した。
掲載誌情報