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文献詳細

雑誌文献

精神医学26巻4号

1984年04月発行

文献概要

研究と報告

Pseudodementia—特に老年期のうつ病との関連について

著者: 柴山漠人1 丸井泰男1 吉田和義2

所属機関: 1名古屋大学医学部精神医学教室 2聖隷三方ケ原病院精神科

ページ範囲:P.367 - P.374

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 抄録 老年期のうつ病の際,稀に痴呆様症状がみられ,うつ状態の軽快とともに消褪するので,pseudodementia(Kiloh,1961)21)といわれる。しかし,臨床的には,痴呆との鑑別の困難な症例も多い。症例1は70歳の男性で,不眠,不穏,失禁で発症し,記銘力障害,脱抑制,見当識障害,計算力障害などが出現し,「老年痴呆」を疑われたが,抗うつ剤,炭酸リチウム投与により軽快した。症例2は67歳の女性で,心気症状で発症し,記憶障害,計算力障害,抽象能力の低下などが出現し,「老年性うつ病」又は「老年痴呆」が疑われ,抗うつ剤投与により軽快した。文献的には,pseudodementiaは老年期だけでなく,初老期にも多く,老化性変化のみでは説明しがたい。体質とか素因を考慮にいれる必要があろう。また,Ganser状態との区別も明確ではない。しかし,治療的ニヒリズムの打破という意味では,有益な概念である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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