icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学26巻4号

1984年04月発行

短報

慢性アルコール症者にみられたCentral Pontine Myelinolysis(CPM)の1例

著者: 市川淳二1 小山司1

所属機関: 1北海道大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.425 - P.427

文献概要

I.はじめに
 Adamsら1)は1959年,橋底部に境界明瞭な左右対称性の脱髄病巣をもつ4例をCentral Pontine Myelinolysis(CPM)と名付けて報告した。以後,文献的には200例近くの報告がある。病因はいまだ不明であるが,最近ではアルコール症,栄養不良,電解質異常(とくに低Na血症),抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)などとの関連が指摘されている。また,その頻度も明らかではないが,アメリカでは剖検によって比較的高頻度(0.2514)〜4.77)%)に発見されている。その基礎疾患として,アルコール症の占める割合が高い(6010)〜77.69)%)のが特徴的である。しかし,わが国では松岡ら8),白木ら11)が1964年にCPMを相次いで報告して以来,現在までに文献上11例を数えるが,アルコール症の例は見当たらない。またEndoら3)の報告によると,連続1,000剖検例中636例の脳について検索し,そのうちの37例(5.8%)にCPMが発見されたが,アルコール症はわずかに1例に過ぎなかった。
 これまでCPMの臨床診断は困難で,すでに報告された症例の大多数は剖検によって病理学的に診断されたものである。しかも実験モデルは容易に得られず,有効な治療法もないとされてきた。しかし最近になって,聴覚誘発反応12)やCT2,9,13)を用いてCPMを生前に臨床的に診断することが可能となった。
 このたびわれわれは,臨床症状に乏しく,CTによってはじめて診断することのできたCPMの1例を経験したので報告する。なお,併せてCPMに関する最近の知見について考察した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら