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文献詳細

雑誌文献

精神医学26巻5号

1984年05月発行

展望

家族研究における2つの流れ—家族画テストと家族絵画療法(その1)

著者: 石川元1

所属機関: 1浜松医科大学精神神経医学教室

ページ範囲:P.452 - P.463

文献概要

I.はじめに
 精神医学の領域での家族研究といえば,古くは遺伝生物学的なアプローチを意味していた。やがて精神分析の隆盛に伴い,患者の語る家族状況が重視された。しかし,治療に実際の家族を介入させることは邪道とされた。ところがとくに米国において,第2次大戦後の混乱の中で,家族内人間関係が注目されてから,精神療法全般の発展や精神病家族の系統的研究とあいまって,家族療法が急速に発展し,国際的にも強い影響を与えた。特定の個人の家族観を扱うだけでなく,特定の家族同士(たとえば母子)の相互関係に注目し,さらに家族全体を1つのシステムとして考える方向への流れは分裂病だけでなく,他の疾患,症状群を対象とした家族研究にも応用された。
 現在の家族研究は実証的方法によって家族内コミュニケーションや集団力動を研究する基礎分野と,特別な訓練を受けた家族療法家が,家族全体に治療的介入を行なう臨床分野に一応区別されている。しかし,そのいずれにも属する分野が存在することも事実である。このことに代表されるように,システム論を中心に統合されてはいても,多様に分化した家族研究に対し,1つの視点から包括的に歴史的展望を加えることはきわめて困難である。そこで著者は,家族画テストおよび家族絵画療法に的を絞った。家族画テストは,個人(とくに子供)の家族観を投影する心理テストとして創始された。一方,家族絵画療法は,実際の家族に同席のうえ介入する家族療法を密着したかたちで発展した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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