文献詳細
古典紹介
—Hans Kunz—精神病理学における人間学的考察方法—第2回
著者: 関忠盛1 宮本忠雄2
所属機関: 1茨城県立友部病院 2自治医科大学精神医学教室
ページ範囲:P.535 - P.551
文献概要
前存在論的存在理解のもとで「理解され」,「措定され」あるいは「投企された」存在は不確定である。この無規定性は,現存在にそれ自身の存在,世界およびそのほかの存在者の存在を「存在者的(seiend)」として語りかけ判定することを許すのだが,それによって,その「なかに」さまざまな存在者が「存在する」いくつかの種類の存在者であること(Seiend-sein)の区別がすでに為されているわけではない。従って,あたかもどんな存在者もその存在者であること一般においては区別されず,「普遍的な」,「統一的な」仕方で存在するという印象が生ずるはずである。このような仕方は,それにもかかわらず必ずしも存在理解の漠然とした存在からは規定されず,むしろある特別な存在者の存在様式もまた――たとえば「生命のない事物」あるいは「意識」一(憶測上の)「存在一般」の手本になりうる。このような仕方でたとえば「現実主義的」(「唯物論的」)あるいは「観念論的」存在論は生ずるのだが,それのそのつどの普遍的な要請は根拠がないに違いない。同じく現存在は,彼が存在理解のもとで,彼自身の存在あるいは「自己-存在(Selbst-sein)」に付与する存在性格をたいていは現存在的でない存在者から取り除く。「現存在は……彼に属する存在様式に従って,自己の存在を,彼が本質的に絶えずまたさしあたり態度をとっている存在者から,つまり『世界』から理解する傾向をもつ。現存在自体および同時に彼自身の存在理解」のなかにあるのは,事実上自己の存在をゆるがせにすることに通じている「世界理解の存在論的反射原注6)」である。
掲載誌情報