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文献詳細

雑誌文献

精神医学26巻6号

1984年06月発行

巻頭言

学説とその伝承

著者: 諏訪望1

所属機関: 1埼玉医科大学神経精神科センター

ページ範囲:P.558 - P.559

文献概要

 私の乏しい経験でも,先人が残した業績の真意を的確にとらえられなかったり,あるいは勝手に解釈したのではないかと反省させられることもなかったとはいえない。また古くから言い伝えられ,われわれの常識になっているような事柄について,その原典に当ってみると,若干の食い違いがあるのではないかと疑われることも必ずしも稀ではない。
 「精神病は脳病である」という命題は,Griesingerに由来するものとしてあまりにも有名であり,多くの成書に引用されている。しかもこの命題は,19世紀の後半に台頭し近代ドイツ精神医学の主流となった反ロマン主義,自然科学主義を象徴する標語として,いささかの抵抗もなく容認されている。ましてJaspersまでが,Griesingerおよびその流れを汲むMeynertとWernickeの学説を“Geisteskrankheiten sind Gehirnkrankheiten”という公式で表わされるものと規定しているので(Allgemeine Psychopathologie, 4. Aufl., S. 382),このような表現の仕方はいっそう権威づけられることになる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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