icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学26巻6号

1984年06月発行

文献概要

研究と報告

DSM-IIIの分裂病性障害の診断基準とProdromal symptomsについて

著者: 太田保之1 荒木憲一1 中根允文1 高橋良1

所属機関: 1長崎大学医学部精神神経科

ページ範囲:P.589 - P.598

文献購入ページに移動
 抄録 叙述的診断基準によって定義分類されているICD-9に従って診断された93例の初診分裂病者をDSM-IIIによって再分類を試みた。その際に起こる諸問題に関しては別の論文で報告した。本論文では,DSM-IIIの分裂病性障害の診断基準のうち,本邦において再々問題点として指摘されてきた「疾患の持続期間-6カ月」という厳密な操作的基準に焦点を絞り,一定の基準で面接し収集した初診分裂病者の早期表出症状を分析し,DSM-IIIに定義されたProdromal symptomsが適切に把握されているか否かを検討した。その結果,DSM-IIIに定義されたProdromal symptomsは充分把えられていたにもかかわらず,93例のICD-9分裂病者のうち35%が,DSM-IIIの分裂病性障害の診断基準のうち,「疾患の持続期間」の項目だけを満足せず,DSM-IIIでは,分裂病性障害以外の診断にふりあてられていることがわかった。発病から精神科施設受診まで6カ月以上の期間が必要とするならば,分裂病性障害の診断においては,Prodromal symptomsの確認方法とProdromal phaseの期間評価法の確立が極めて重要な問題として浮びあがってくることを指摘し,併せてこれに文献的考察を加えた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?