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研究と報告
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抄録 皮膚寄生虫妄想を呈する58歳の女性と,48歳のBehçet病に罹患している男性の2症例について報告した。症例1では,虫の体表を動く軌跡が実体的に知覚され,さらに,虫はてんとう虫様のものに表象されていた。虫に対して,財産問題で恨みを持つ兄が這わせたとの被害妄想的解釈や,虫が意地悪な気持を持っているようだとの被害的擬人化がなされていた。症例2は,Behçet病のために失明後,皮下に細長い虫が群生しているとの妄想が出現したが,Behçet病の原因およびあらゆる身体症状が,すべてその寄生虫に起因するとされ,説明妄想としての役割が大きかった。これら2症例について,多次元的立場から,発症時の精神的状況.発病の契機と症状選択,病前性格との関連,虫に対する意味づけと妄想の持つ役割,身体的条件などについて考察を加えた。
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