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研究と報告
多彩な症状を呈した悪性症候群Syndrome Malinの2例
著者: 中村清史1 佐野欽一2 松林直2 島田明範2 山口弘一2 金子宏明2 溝口正美2 緒方明3 櫻井俊介4
所属機関: 1東京海道病院 2第二駿府病院 3国立静岡東病院(てんかんセンター) 4静岡赤十字病院
ページ範囲:P.833 - P.840
文献購入ページに移動症例1はhaloperidol 10mg静注に引き続き,高熱,昏迷,無動,筋硬直・振戦などの錐体外路症状,発汗・唾液分泌過多などの自律神経症状に加えて,助産婦手位・下肢のけいれんなどテタニー症状を示し,さらに特有な姿勢を保ち頸筋の強剛・圧迫による上腕神経叢症候群を認め,左上肢の弛緩性麻痺Duchenne-Erb型の麻痺を来している。本例では両側の手指や足指の変形,拘縮,足指の尖足位一足底への伸展などの固縮を認めている。症例2はfluphenazine enanthate 25mg筋注後に上記の症状を認め,全身の筋緊張亢進(筋硬直)および上肢に粗大なWilson病にみられるはばたき振戦flapping tremorが認められた。両症例ともCPKやLDHの異常値を示し,さらにそれぞれのisoenzymeの異常がみられ,CPKのisoenzyme分析で,骨格筋に由来するMM型,LDHの分画でLDH5の上昇が認められている。
最近,悪性症候群syndrome malinの原因として間脳や中脳などの自律神経系の中枢や錐体外系路へのtoxicな障害だとする説以外に,骨格,筋など末梢への作用も関与しているという報告11〜14)が散見されるが,われわれの症例でも,それを示唆する所見が認められている。本論文では従来の報告で稀であるテタニー発作とそのメカニズム,頸筋の筋硬直による上腕神経叢症候群やhaloperidol静注などの問題について検討を行った。
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