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文献概要

短報

アルデヒド脱水素酵素の個体差と飲酒習慣およびアルコール症との関連

著者: 大森哲郎1 原田勝二2 日比望3 村田忠良4 山下格5

所属機関: 1市立札幌病院附属静療院 2筑波大学社会医学系 3北海道大学医学部第一生化学教室 4札幌天使病院精神神経科 5北海道大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.883 - P.885

I.はじめに
 アルコールに対する生体反応には個人差が大きく,小量の飲酒でも顔面の紅潮するflushingを来す人と,多量に飲酒してもその傾向を示さない人がいる。このようなアルコール感受性の差異は,アルデヒド脱水素酵素(aldehyde dehydrogenase:ALDH)の個体差によるところが大きいことが指摘されている4)
 周知のようにアルコールは生体内で主にアルコール脱水素酵素(alcohol dehydrogenase:ADH)の作用によってアセトアルデヒドになり,次いでアルデヒド脱水素酵素(ALDH)により酢酸へと代謝され,最終的には水と2酸化炭素に分解される。そのうち飲酒時の酩酊状態に関与するのはアルコールそのものとアセトアルデヒドであり,特にnushingや心悸亢進などの徴候は専ら後者の作用によることが知られている7)。またアセトアルデヒドの血中濃度を規定しているのは主としてALDHの活性である。このALDHには2つのisozymeがあり,日本人の約4割は,アセトァルデヒドと親和性の高いALDH-I(low km AL-DH isozyme,km=3μM)を遺伝的に欠いている。これを持たない個体ではALDH-II(high km ALDH isozyme,km=30μM)が代謝に与るが,ALDH-IIはアセトアルデヒドとの親和性が低いため,その濃度がある程度以上高くならないと効率よく作用しない。したがってALDH-Iを保有する個体に比べて飲酒時にアセトアルデヒドが血中に蓄積され,その直接的あるいはモノアミンなどを介する間接的な作用のために,flushingその他の中毒症状が発現すると考えられる6)
 われわれは臨床的にALDH-Iの表現型(活性の保有または欠損)を検討し,flushingとの相関を再確認するとともに,飲酒習慣およびアルコール症との関連について興味深い結果を得たので報告する。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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