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文献詳細

雑誌文献

精神医学26巻8号

1984年08月発行

文献概要

古典紹介

—Marie, P.—「失語症の問題に関する再吟味」—第1論文:左第3前頭回は言語機能に何ら特別の役割を果たしていない—第2回

著者: 岡部春枝1 大橋博司2

所属機関: 1大阪府寝屋川保健所 2京都大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.887 - P.896

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VII
 今や我々は,臨床的な観点からWernicke失語,Broca失語,アナルトリーがどのようなものであるかを知ったのであるから,この研究の真の目的,これら様々な症候群の局在について述べよう。
 アナルトリーについては何の困難もない。その病巣をレンズ核とその周辺領域に局在させることに皆意見が一致している。レンズ核自身のこともあり(図2),前部で内包膝のこともあり,外包のこともある。注目されるべき事実とは,アナルトリーが左半球の病巣のみで起こるものではなく,レンズ核領域のレベルで,右半球の病巣のときにも同様にみられることである。これが失語症との主たる相違であって,失語症はもっぱら左半球に関係するものなのである。もうひとつ注目すべき事実とは,一側半球の病巣による場合,アナルトリーは自然治癒傾向を表わすことがあり,少なくともかなりの回復がみられる。おそらくそれは健常側半球の代償によるものであろう。これに反して失語症では,少し程度がひどくなると回復傾向が全くみられない。失語症ではこのような代償は問題外である。アナルトリーがレンズ核の病巣,それも両側のレンズ核の病巣による場合,アナルトリーは存続し,したがってしばしぼ仮性球麻痺の症状と一致する。アナルトリーに関する限り,次の事実を強調する必要がある。つまり,ここでは厳密に構音運動の障害にとどまらず,言語の表出に一致協力している非常に複雑なすべてのメカニズムの調節障害までも含むのである。これらのメカニズムは,リヨン医学会での報告(Semainc Médicale,1894,p. 496参照)でP. Raugé氏によってすでにたいへん詳しく分析されている。言葉の機械的な構成は,少なくとも3っの基本的な働きから成っている。1°呼気流の産生,これは中枢神経によって,その強さ,速さ,リズムを正確に調整されている。2°この気流を声帯レベルで振動させ,音を発し,抑揚をつけること。3°音になったこの気流から母音や音節を構成すること,つまり,いわゆる構音によって言葉を産生すること。アナルトリーでは,しばしばこれら様々なメカニズムのすべてに同時に障害がみられるのであって,一般に間違って言われているように,構音のみが障害されているのではない。すでにBrissaudはその講義で,仮性球麻痺における抑揚,その他の障害を強調している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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