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研究と報告
高齢で初発した幻聴を主徴とする症例
著者: 立山萬里1 浅井昌弘1
所属機関: 1慶応義塾大学医学部精神神経科
ページ範囲:P.35 - P.41
文献購入ページに移動 抄録 高齢になってはじめて幻聴を主徴に発病した女性3例を報告した。いずれも60歳以上の発病で,主訴は,「ムジナの声が聞こえ,いちいち動作に注文をつける」(第1例),「隣人の声で『爆弾を落とす』とおそろしいことが聞こえる」(第2例),「水道の音に混じって悪口が聞こえる」(第3例)と,具象的で実体性のある内容で,空間に定位されやすく,夜間に増強し,極期を除いて批判力は比較的保たれているという特徴があった。いずれも経過中には知的減退や人格のくずれは目立たず,幻聴は,構造的には一級症状(Schneider, K.)と同じものも認められ,抗精神病薬に反応するが再燃傾向があり,知覚としてより明瞭な表現型をとる一方,批判力を持ちやすい点から,幻覚症(ClaudeとEy)として抽出されうる面もあると思われた。また,脳器質性疾患の幻覚との類似点や,幻覚の明瞭度に及ぼす加齢性の影響について考察した。
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