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特集 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)―その病態と臨床
アメリカにおける睡眠時無呼吸症候群の研究と治療の現況
著者: 藤田史朗123
所属機関: 1 2Sleep Disorder & Research Center, Henry Ford Hospital 3
ページ範囲:P.207 - P.217
文献購入ページに移動Sleep Apnea Syndrome(睡眠時無呼吸症候群)は過去10年間米国の医学界に華やかな話題を提供し医学関係者だけでなく一般庶民からもジャーナリズムを介して大きな注目を浴びてきた。長年常習性いびきに悩む者が日中頻回に睡気を催し身体疲労感を訴えるという症例はこれまでしばしば観察されていた。しかしこれらの症状が睡眠中に起こる低酸素症(hypoxia),不整脈や高血圧症の潜んだ原因となる閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syndrome―以下OSAと略記)を示唆しているということに医師が注意を払うようになったのは極めて最近のことである。1956年Burwellが病的肥満者にみられる肺胞換気不全,過剰睡眠,赤血球過多,周期的睡眠時無呼吸発作と右心肺を特徴とする症候群を認め,これをPickwickian Syndromeと呼んだのは周知のことである1)。1837年に発表されたCharles Dickensの小説「Pickwick Clubの遺文録」の登場人物の一人である給仕Fat Boy Joeの行動や身体症状がこの症候群を代表する患者の症状に類似していることは歴史上注目に値する。以来sleepapneaの原因となる疾患の症例報告や病態生理,内科的及び手術的治療に関する研究報告の数が年年増加する傾向にある。因みに10年前には米国に存在していたSleep Disorder Centerは僅かに5カ所を数えるに過ぎなかったが,全米各地のMedical Centcrに公認の睡眠研究所が次々に設立されmushroomingという表現さながら現在その数は30に達し未公認の施設を含めれば100を越えていると推定される。ところで,sleep apneaの理解と治療に関する急速の発展は多数専門分野の協力によるアプローチ(multidisciplinary approach)によりて推進されてきたことは明らかで,睡眠生理,異常睡眠の病態生理研究に従事する専門家(生理学,精神科,神経科)の業績によるだけでなく睡眠と関係ある呼吸機能障害に興味を持っている専門医等(胸部内科,耳鼻咽喉科,小児科)がそれぞれの専門領域において観察した情報や知識の絶えざる交換によるところが大きい。
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