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パラフレニーとフランスの慢性妄想病群—第1回
著者: 濱田秀伯1
所属機関: 1慶応義塾大学医学部精神神経科学教室
ページ範囲:P.256 - P.265
文献購入ページに移動I.はじめに
パラフレニーは,Kraepelinが第8版の教科書12)に記載した語であるが,今日の臨床では稀にしか用いられない。語源的には,ギリシャ語のパラπαρα(かたわらの,本質をはずれた,という意味を表わす接頭語)とフレンψρηυ(横隔膜の語源で,心を表わす)をつなぎ合わせた合成語で,「精神が本来の機能をはずれた状態」を示す一方,語意,語惑的にはParanoiaとSchizophrenieの両方の特徴を合わせもつ中間的概念でもある。したがって,パラフレニーを研究することは,現在まで議論の多い精神分裂病(以下,分裂病と記す)の妄想型とパラノイアの範囲,境界づけの問題に,何らかの手掛りを与えてくれるかもしれない。本論文は,パラフレニーを軸に,この概念が生み出された背景とその後の変遷をたどりながら,あわせて,当時のヨーロッパ精神医学を支配していた2大潮流,ドイツとフランスの妄想研究の歴史的なかかわり合いを,素描することを目的に書かれたものである。
パラフレニーは,Kraepelinが第8版の教科書12)に記載した語であるが,今日の臨床では稀にしか用いられない。語源的には,ギリシャ語のパラπαρα(かたわらの,本質をはずれた,という意味を表わす接頭語)とフレンψρηυ(横隔膜の語源で,心を表わす)をつなぎ合わせた合成語で,「精神が本来の機能をはずれた状態」を示す一方,語意,語惑的にはParanoiaとSchizophrenieの両方の特徴を合わせもつ中間的概念でもある。したがって,パラフレニーを研究することは,現在まで議論の多い精神分裂病(以下,分裂病と記す)の妄想型とパラノイアの範囲,境界づけの問題に,何らかの手掛りを与えてくれるかもしれない。本論文は,パラフレニーを軸に,この概念が生み出された背景とその後の変遷をたどりながら,あわせて,当時のヨーロッパ精神医学を支配していた2大潮流,ドイツとフランスの妄想研究の歴史的なかかわり合いを,素描することを目的に書かれたものである。
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