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研究と報告
精神病者の幻聴現象の分析—多変量解析による試み I
著者: 林直樹1
所属機関: 1東京大学附属病院分院神経科
ページ範囲:P.267 - P.278
文献購入ページに移動 抄録 著者は精神病患者58名に対して幻聴に関する半構成面接を行い,幻聴の様式,内容,幻聴に関連した症状などについて調査し,この調査資料の反応パタンに対して林の数量化理論第3類を施行した。その結果3つの軸が取り出された。これらは幻聴体験が患者の内界で思考的に(vs. 外界で知覚的に)生じるものであることを示す第1軸,そして患者の幻聴からの一方的被影響性(vs. 患者の幻聴体験への影響可能性)および幻聴体験の親近性(vs. 侵襲性)をそれぞれ反映すると思われる第2軸,第3軸である。そしてこの3つの軸を座標軸として描いた3次元散布図の分布から幻聴体験中の諸要素が,患者の外界に知覚的に体験される要素群,患者の内界にて親近的に体験される要素群,患者の内界の自我障害の要素群,およびその他,に分類できることを明らかにした。さらに第3軸の値で安永の分裂病症状理論のE-eB型とAf-F型の幻聴要素が分離されたことから,第3軸が患者の自我の主体としての機能の障害(自極の分裂病性障害)をも反映していると考えられること,そして幻聴現象の中にSchizophrenia Paranoid Distinction(Magaro)の観点に沿った幻聴要素の構成が見出されることなどを示した。
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