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雑誌詳細

文献概要

研究と報告

青年期分裂病の寛解過程にみられた退行現象について

著者: 井上洋一1 北村陽英1

所属機関: 1大阪大学医学部神経科精神科

ページ範囲:P.279 - P.286

 抄録 本症例は分裂病急性期症状が短期間で消褪し,寛解過程に入って早期に復学したにもかかわらず,家人に対して幼児的な退行現象を示した青年期分裂病例である。興味あることには,その回復過程で異なった性格を与えられた2つのぬいぐるみが登場した。ぬいぐるみは対立する2つの心理の表現であると考えられた。本症例を検討した結果,1)本症例は笠原らの言う「外来分裂病」の概念に該当する。2)本症例の退行は従来言われている精神病後退行postpsychotic regressionとは異なっていた。3)分裂病寛解過程には休養と社会復帰の2つの課題があり,両者の対立から本症例の寛解過程における困難が生じた。4)ぬいぐるみはWinnicott, D. W. の言う移行対象と同じ働きをし,患者と両親との情緒交流を媒介した。5)分裂病寛解過程における患者の対象関係は未分化な段階から分化した段階へ移行する過程にあり,患者の対象関係のレベルに応じた対応が必要であった。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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