文献詳細
短報
離人症を呈した低テストステロン血症の1例
著者: 切池信夫1 古塚大介1 泉屋洋一1 川北幸男1
所属機関: 1大阪市立大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.359 - P.362
文献概要
離人症とは「自己疎隔感,感情疎隔感,自己同一性喪失感,実行意識喪失感」などを主症状とし4,10),分裂病,うつ病,神経症,てんかん,脳器質性障害,薬物中毒などの他,一過性には健常人においても出現する非特異的症状であるとされている4)。その発症機序については精神分析理論に基づく心因論から,身体的基盤を重視する立場まであり,いまだ定説をみていない。しかし,間脳症,てんかん,薬物中毒,LSD,メスカリンその他の幻覚剤の服薬などによって離人症を生じることが観察されていることから,古くから離人症の身体基盤として間脳の機能異常が推定されている4)。
今回われわれは司法試験の受験勉強という長期間の心身にわたるストレス状況下で,離人症と性機能障害を呈し,検査の結果,間脳性低テストステロン血症が見出され,アミトリプチリンの投与によりこれらの症状が改善した症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。
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