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文献詳細

雑誌文献

精神医学27巻4号

1985年04月発行

文献概要

研究と報告

人間学的診断の有用性—非定型精神病の1例をめぐって

著者: 中嶋聡1

所属機関: 1関東中央病院神経精神科

ページ範囲:P.389 - P.398

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 抄録 臨床上てんかんの症状を示さず,妄想型分裂病に類似した病際を示しながら,脳波上てんかん性異常の見られた1例につき報告した。臨床的には,気分の変わり易さ,衝動性,および年齢にそぐわない子供っぼさが特徴的であった。また,感情的な豊かさ,対人接触の良さといった特徴も認められた。他方,妄想の精神病理学的分析により,妄想内容の世俗性,妄想他者の具体性,妄想確信の単純性といった特徴が見出された。こうした諸特徴は,分裂病としても,または他の従来の診断的範疇によっても,理解が困難であった。そこでより,包括的な考え方を求めて人間学的立場に注目し,木村の人間学に基づいて検討を加えた。その結果,脳波所見を含む症例の各特微を,木村のいうintra-festum構造の様々な現われとして把握することができた。さらに,この基盤の上に立って,本症例をintra-festum構造の病理としての非定型精神病の一型として,積極的に位置づけることができた。こうした人間学的な疾患理解の仕方は,症例の多様な側面を統一的に把握し,さらに整理の不十分な領域における疾患概念の統一のために役立つように思われた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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