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特集 精神分裂病の成因と治療—東京都精神医学総合研究所 第12回シンポジウムから
分裂病脳における神経伝達の異常
著者: 融道男1
所属機関: 1国立武蔵療養所神経センター疾病研究第三部
ページ範囲:P.499 - P.509
文献購入ページに移動精神分裂病,とくに慢性分裂病の治療法を見出すことは,現在の精神医学の最大の課題である。慢性分裂病の特徴について精神病理学的,精神生理学的にいくつかの知見が得られているが,神経生化学的にはほとんど研究されていないといってよい。
われわれは分裂病死後脳について生化学的分析を続けているが,得られた所見のなかにいわゆるドーパミン過剰仮説を支持するデータ以外に,グルタミン酸,サブスタンスP,メチオニンエンケファリンの異常が見出された。われわれの対象とした症例はほとんどが慢性例であるので,これらの所見のなかに慢性病像に特有なものが含まれていると考えている。慢性分裂病脳における神経伝達の異常について明らかにすることは,その治療法を開発する一つのいとぐちになるものと思われる。
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