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文献詳細

雑誌文献

精神医学27巻5号

1985年05月発行

特集 精神分裂病の成因と治療—東京都精神医学総合研究所 第12回シンポジウムから

分裂病モデルとしての6-hydroxydopamine投与動物

著者: 山本健一1

所属機関: 1東京都精神医学総合研究所神経生理研究室

ページ範囲:P.511 - P.520

文献概要

I.序
 戦後の日本を見舞った人類初の覚醒剤の大流行の中で,松沢病院の臺らは,覚醒剤中毒と分裂病の類似性に着眼し,これを分裂病の生物学的研究の足がかりとした1)。その後の研究結果,覚醒剤はcatecholamine(CA)の放出促進物質であり2),その誘発する異常行動の多くはCAの合成阻害剤であるα-methylparatyrosineの投与で抑えられることが分ってきた3)。分裂病や覚醒剤中毒に効く神経安定薬の作用機序も,promethazine(phenothiazine系薬物だが抗分裂病作用がない)の薬理作用との比較などから,やはりCA系を介することが確からしくなってきている4)
 これらの根拠から,分裂病症状の発現機序として,脳内CA系の異常が強く疑われているのは周知のとおりである5)。もしこのCA異常説が正しいとすれば,CA系にもっと特異的に作用する他の薬物によっても,分裂病症状の少なくとも一部は,再現できるはずである。ここで述べる6-hydroxydopamine(6-OHDA)は,その構造上の類似性の故に,CAニューロンに選択的に取り込まれ,その神経終末を変性脱落させるとともに6),その代償としてシナプス後膜の除神経過敏を引き起こす物質である7)。6-OHDAと分裂病研究の関係には,次のような経緯がある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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