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文献詳細

雑誌文献

精神医学27巻5号

1985年05月発行

文献概要

特集 精神分裂病の成因と治療—東京都精神医学総合研究所 第12回シンポジウムから

精神分裂病の成因と治療—新しい治療法について

著者: 諸治隆嗣1

所属機関: 1東京都精神医学総合研究所精神薬理

ページ範囲:P.531 - P.544

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I.はじめに
 複雑な脳機能の基本現象であるニューロン間の情報伝達はニューロンの神経終末nerve terminalから放出される神経伝達物質neurotransmitterと呼ばれる化学物質を介して行われているという考えが,現在,一般に広く支持されている。1960年代までに同定された神経伝達物質はアセチルコリン,ノルエピネフリン(NE),ドーパミン(DA),セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン,5-HT),γ-アミノ酪酸(GABA)にすぎない。その後,グリタミン酸,アスパラギン酸,グリシンなどのアミノ酸もまた神経伝達物質と見做されるようになっている。そして,これまでに同定された比較的限られた神経伝達物質の中枢作用によって,高次の中枢神経系の機能である精神現象までもがある程度まで説明が可能ではないかと考えられるようになっていた。
 ところが,放射免疫測定法radioimmunoassayや免疫細胞化学的技法immunocytochemistryの発達によって,最近,いろいろなペプチドpeptidesが脳内に存在していることが分り,しかも,比較的短期間のうちにその多くが神経伝達物質あるいは神経修飾物質neuromodulatorとしてニューロン間の情報伝達に深く関わっていることを示唆する証拠が集積されてきていることから,これらのペプチドは神経ペプチドneuropeptidesと呼ばれている。現在,脳での存在が立証されているペプチドは優に30種類を超えており,そのうちの20数種類がすでに神経伝達物質あるいはその候補物質と考えられている(表1)29)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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