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特集 前頭葉の神経心理学
前頭前野と短期記憶
著者: 小嶋祥三1
所属機関: 1京都大学霊長類研究所心理部門
ページ範囲:P.625 - P.631
文献購入ページに移動I.はじめに
小論ではヒト以外の霊長類(特にアカゲザルなどのマカカ属のサル)の前頭前野と短期記憶の関係について論ずる。前頭前野の破壊研究を中心に述べるが,ニューロン活動の記録を行なった実験の知見などにも言及する。
前頭前野と短期記憶の関係を論ずるにあたって先ず問題になるのは,動物の短期記憶はどのような課題によって検討されているのかという点である。筆者が遅延条件性弁別と呼ぶ一群の課題がそれにあたる。これらの弁別課題では,動物は複数の刺激の中の1つを選択することにより報酬を得るが,特定の刺激が報酬と結びつくことはない。正刺激は試行毎に別の刺激によって指定される。すなわち条件性弁別である。加えて,この正刺激を指定する刺激は,動物が選択反応を行なう時には既に消失しており存在しない。したがって,課題の解決に重要な刺激の呈示と選択反応の間には空白の時間(遅延)があり,動物はこの刺激の記憶に基づいて反応を行なう。短期記憶の時間的範囲は明確に定義されていない。ここでは数秒より数分の範囲としておく。
小論ではヒト以外の霊長類(特にアカゲザルなどのマカカ属のサル)の前頭前野と短期記憶の関係について論ずる。前頭前野の破壊研究を中心に述べるが,ニューロン活動の記録を行なった実験の知見などにも言及する。
前頭前野と短期記憶の関係を論ずるにあたって先ず問題になるのは,動物の短期記憶はどのような課題によって検討されているのかという点である。筆者が遅延条件性弁別と呼ぶ一群の課題がそれにあたる。これらの弁別課題では,動物は複数の刺激の中の1つを選択することにより報酬を得るが,特定の刺激が報酬と結びつくことはない。正刺激は試行毎に別の刺激によって指定される。すなわち条件性弁別である。加えて,この正刺激を指定する刺激は,動物が選択反応を行なう時には既に消失しており存在しない。したがって,課題の解決に重要な刺激の呈示と選択反応の間には空白の時間(遅延)があり,動物はこの刺激の記憶に基づいて反応を行なう。短期記憶の時間的範囲は明確に定義されていない。ここでは数秒より数分の範囲としておく。
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