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特集 前頭葉の神経心理学
前頭葉と精神分裂病—局所脳血流所見
著者: 倉知正佳1 小林克治1 鈴木道雄1 平松博1 山口成良1 松田博史2 久田欣一2 桃井文夫3
所属機関: 1金沢大学医学部神経精神医学教室 2金沢大学医学部核医学教室 3松原病院
ページ範囲:P.697 - P.703
文献購入ページに移動人間における脳血流測定の分野は,KetyとSchmidt14)により開拓されたが,当時のN2O吸入法による全脳の血流については,精神分裂病と正常者とに差は認められなかった(Ketyら)15)。1974年IngvarとFranzen9)は,133Xe左内頸動脈注入法を用いて,慢性分裂病患者の局所脳血流を測定し,平均半球血流は保たれているものの,前頭優位性(hyperfrontality)が減退していることをはじめて報告した。近年のポジトロンCTでも,18F-デオキシグルコースや11C-グルコースを用いて,前頭部の低活性が認められ(Buchsbaumら4),豊田ら31)),またX線CTでは,前大脳縦裂,シルビウス裂,第3脳室などの拡大が有意に多く認められている(高橋ら)30)。
脳血流検査法については,その後133Xe吸入法が開発され,非侵襲的に,かつ両側半球の血流測定が可能になった(Risberg)28)。さまざまな条件下における局所脳血流とグルコース代謝等の関連は,今後も検討される必要があるが(Miesら)23),脳血流は通常,脳の代謝状態を反映するので(Raichleら)27),この方法により,比較的簡便に大脳の機能状態を知ることができる。すなわち,133Xe吸入法によっても,脳損傷の場合だけでなく,対側の手の運動,聴覚や視覚刺激などの賦活により,局所脳血流の部位的変化が認められている(Knopmanら16),松田21))。
ここでは,われわれが最近行っている分裂病患者についての133Xe吸入法による局所脳血流所見を中心に述べ(Kurachiら)17),分裂病と前頭・側頭葉機能との関連について若干の考察を試みたい。
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