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研究と報告
文献概要
抄録 前思春期(11歳の女子小学生)の全生活史健忘例について報告した。本症を「変身願望」の表われと解する著者は,本例においても治療目標を記憶の回復には置かず,患者がより伸々とした年齢相応の少女へと「変身」することへの手助けにその目標を置き治療した。(記憶は治療が妥当であればその過程で必ず回復するものである。)記憶の回復に影響を受けぬ一貫性のある治療は,本症の病理を同一性(連続性・一貫性)の障害と考える著者らにとっては重要な治療上の鍵概念であるばかりか,本症の持つ大いなる疾病利得から患者が離脱することを容易にするものと考える。さらに本治療においては前思春期という発達年齢を考慮し,患者面接には絵画を媒介として用いたり,家族面接を並行して行なった。そうした配慮は,患者の退行を病的なものからより発達的なものへと変化させ,患者をより良き「変身」へと導いたものと考える。
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