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文献詳細

雑誌文献

精神医学28巻1号

1986年01月発行

文献概要

展望

精神分裂病の長期予後

著者: 横井晋1

所属機関: 1横浜市立大学医学部精神医学講座

ページ範囲:P.6 - P.19

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I.はじめに
 少し年を取った精神科医ならば,自分の周囲に数十人の分裂病者を抱えているだろう。
 この人達の話を聞いたり,慰めたり,励ましたりするのがわれわれの仕事である。時には夜間突然電話を掛けてきて,隊の人が俺を馬鹿にして挨拶しても返事もしないと訴えてきたり,いい加減に電波をかけて俺のやることに干渉するのは止めてくれ,この馬鹿野郎と怒鳴られたりする。こんな人はよく聞いてみると最近通院していなかったり,薬が切れて服薬していない人が多い。このような患者を導いていくのはわれわれの努めである。
 しかし一番困難なことは初診時に予後を判定することで,Kraepelinの早発性痴呆はその名の如く予後不良を想定した病名であった。しかし初診の際にこれをこれを判定することは至難の業である。Carpenterら29)は症状を得点により評価する方法で,最高,最低点をとった20人ずつの患者の5年後の予後を調査した。その結果多くの症状の中で唯一信頼できるのはrestricted or flattened affective expression即ち常人のような情緒的反応が欠如し,空虚で表情の乏しい顔付の如き症状のみが予後不良と明らかな相関をもち,他の症状はいずれも確かに有意なものはなかったという。
 わたしはここで従来の文献を概観し,自らの経験をふまえてわたしなりの予後論を述べてみたい。本文に先立って数例の症例を簡単に述べることをお許しいただきたい。この人達は日常の診療で付き合っている愛すべき人々である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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