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文献詳細

雑誌文献

精神医学28巻10号

1986年10月発行

展望

単一精神病論とその臨床的意義(後篇)

著者: 諏訪望1

所属機関: 1埼玉医科大学神経精神科センター

ページ範囲:P.1090 - P.1101

文献概要

V.現代における単一精神病論
1.単一精神病論の復興とその背景
 ロマン主義時代に発展した単一精神病論は,Griesinger15)によって完成されさらに終結に導かれたということができる。一方,科学としての精神医学の進歩とともに,精神疾患のそれぞれの成因も次第に解明され,精神疾患全体の単一性という考え方は,理論的には成立する根拠を失ったことになる。しかし同時に,成因がまだ解明されないいわゆる「内因性精神病」の領域では,依然として単一論的な思考方式が適用される可能性が残されているとみなすこともできる。この可能性と,Kraepelinの二分法に宿命的につきまとう矛盾が臨床的にしばしば経験されるという実態とが結びついて,「内因性単一精神病」という概念の誕生をみるにいたったものと考えられる。このように,現代の内因性単一精神病論は,歴史の流れの中でロマン主義時代の単一精神病論とのかかわりをもってはいるが,決してたんなる再現ではないことに留意しなければならない。
 すでに述べたように,単一精神病を主題とするかまたはそれに深く関連した総説は,Rennert37,38)およびVliegen49,50)らによってまとめられているが,それらをみると,単一精神病について論ずる場合には,少なくとも精神医学の思想の流れに関与するすべての論説を検討しなければならないことになる。しかしそれはあまりにも繁雑であり,また実際には不可能でもあるので,RennertやVliegenの論述の中で浮び上ってくる,いくつかの重要と思われる所論をとりあげ,それらをつなぎ合せて,現代における内因性単一精神病論の大筋を描くことにする。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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