研究と報告
長期入院の精神分裂病患者における—認知地図の断片化
著者:
横田正夫1
依田しなえ2
宮永和夫1
町山幸輝1
所属機関:
1群馬大学医学部神経精神医学教室
2慈光会病院
ページ範囲:P.1111 - P.1117
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抄録 われわれは先に精神分裂病新鮮例を主な対象として病棟内認知地図検査を行った。今回は陳旧分裂病患者80名を対象に同様な検査を,認知地図を自由に描かせる(自由検査)条件および病棟の外壁を示す枠組み内部に描かせる(制限検査)条件で行った。描画表現の中心によって認知地図をS型(全体中心),SS型(部屋部分中心),R型(廊下部分中心)およびN型(数字で部屋を表現)の4描画型に分類した。自由検査において,SS型の出現率は42.5%で,新鮮例の結果と一致し4描画型のなかで最高であり,描画の断片化現象が分裂病患者の基本的障害のひとつであることを示唆した。自由検査でSS型を示す患者は制限検査においてもSS型のままであることが多かったが,自由検査でR型を示す患者の多くは制限検査でS型に変化した。SS型の患者はS型,R型よりも若年発症であり,自由検査がSS型の患者で制限検査でもSS型のものは,制限検査でS型に変化したものより罹病期間が長かった。またN型の出現数は少ないが,陳旧例に独特な描画型であった。この型の患者は他の3型よりも若年発症だった。このようなSS型,N型と陰性症状や治療抵抗性との対応が考察された。