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文献詳細

雑誌文献

精神医学28巻10号

1986年10月発行

短報

L-Dopa点滴静注が著効を奏した悪性症候群の1例

著者: 井上猛1 池田輝明1 松原良次1 菅沼由起子1 小林義康1

所属機関: 1市立小樽第二病院精神神経科

ページ範囲:P.1176 - P.1179

文献概要

I.はじめに
 現在までに悪性症候群の治療として,neurolepticsの中止,補液,冷却,解熱剤,抗生剤投与などの全身管理の他,抗パーキンソン剤(抗パ剤)をはじめ,diazepam11),chlorpromazine6),dantrolene1,13)などの薬物投与があげられている。とくに抗パ剤の使用は,悪性症候群の発症機序の1つとして指摘されている中枢性ドーパミン系の異常との関連で注目される。すなわち抗パ剤は抑制されたドーパミン系を回復させることにより,症状改善をもたらす可能性をもつものであり,すでにdopamineの前駆物質であるL-Dopa4,7,8)やdopamine agonistであるbromocriptine12)などの有効例が報告されている。ただしL-Dopaの使用はすべて内服によるものであり,静注あるいは点滴静注を試みた報告はない。
 最近われわれは,肝癌を併発して重篤な疲弊状態に陥った後,幻覚症状と運動不安を呈した慢性アルコール中毒の患者を経験,このため長期投与していた抗うつ剤とbenzodiazepine系薬剤を中止しhaloperidol 3mgを投与したところ,3日後に悪性症候群の発症をみた。これに対しL-Dopaの点滴静注を試み,著明な改善を認めたのでここに報告する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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