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研究と報告
保健所定期精神衛生相談例の分析—受診行動モデル適用の試み
著者: 太田敏男1
所属機関: 1埼玉医科大学精神医学教室
ページ範囲:P.1237 - P.1246
文献購入ページに移動 抄録 月2回の定期的精神衛生相談例109例に対して,受診行動モデルの見地から検討を加えた。本人と家族の成員のそれぞれにおいて受診行動が潜伏相,認知相,帰因相,受診前相,そして受療相の順に進行するというモデルを想定した。成員は相互に影響を及ぼし合うと考え,また受療相の直前に障壁と引金という要因を設けた。症例がどの相で行き詰まりやすく,保健所の援助を求めるかは,本人と家族の間で,また相談対象者の診断によって異なっていた。病状の悪化以外のことが受診の引金になることがあった。相談時の本人と家族の受診行動が進行した段階にあるケースほど,その後受診に結び付きやすい傾向があった。既に受療中のケースもかなり多く,全体の約1/4を占めていた。以上の結果を踏まえて,保健所の精神衛生相談での援助の実際について考察し,受診行動モデルによる症例の分析の有用性を論じた。また,精神科における病気概念の理解の必要性にも触れた。
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