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文献詳細

雑誌文献

精神医学28巻11号

1986年11月発行

脳の働きと心―大脳の機能をめぐって

前頭葉の神経心理症状

著者: 山鳥重1

所属機関: 1姫路循環器病センター神経内科

ページ範囲:P.1281 - P.1292

文献概要

I.はじめに
 前頭葉の機能は謎に包まれている。Teuber(1964)はかつて,前頭葉の謎という表現を用いた。確かに,頭頂葉,後頭葉などの機能のある程度の分りやすさに比べると,前頭葉は分りにくい。その一つの理由は前頭葉がきわめて広い領域であるにかかわらず,全てを前頭葉として一括して考えるところにあると思われる。これまでの多くの前頭葉に関する研究も前頭葉をまとめて語るものが少なくない。しかし,細胞構築学的には前頭葉は少なくともfrontal agranular cortex(Brodmannのarca 4,6,8)とそれより前方のPrefrontal granular cortexに大別される(Brodal,1981)。この構造上の差から機能を類推すると,agranular cortexはなんらか運動的な役割を持ち,granular cortexは運動との直接的関連が薄いことが示唆される。したがって,前頭葉の神経心理機能を考察するにはこの二つの領域を可能な限り区別して考えることが必要であると思われる。両者の境界をどこに置くかについては学者によってかなりの違いがあるが,本論ではBrodal,Denny-Brown(1951),Fuster(1980),Damasio(1979),Brown(1985)などを参考にして一応agranular cortexのうち中心前回(area 4)を除くarea 6,8,44,45を運動前野と呼び,それより前方を前頭前野と呼ぶことにする。この場合問題はarea 9でこの領域は第2前頭回ではかなり後方まで伸展しているがとりあえずarea 8とarea 45をまっすぐ結ぶ線で分けることにした(図1)。CT上の病巣が整理しやすいという人為的理由からである。CT上の病巣は田辺(1982)のCTアトラスに従って,この二つの領域に入るか入らないかを決定した。この運動前野と前頭前野の二つの領域の神経心理症状を別々に考察してみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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