文献詳細
特集 現代の子供—心身の発達とその病理—東京都精神医学総合研究所 第13回シンボジウムから
文献概要
I.はじめに
「現代の子供—心身の発達とその病理」という統一主題のもとに,筆者に与えられた課題は「子供の心の発達における両親の役割」である。この課題は様々な視点から論じ得るし,そして事実論じられすでに論じ尽くされた観がなくもないが1,2),筆者はこれを大人の中に潜む子供の問題として,夢,昔話,遊びの観点から大人の症例を分析し,結果として父母の役割・機能を推論しようと思う。視点には対象を視る角度と対象からの距離の二つが合意されていて,視る角度は新たな側面の発見に,距離は細部の明細化と視野の拡大による部分と全体の統一性に寄与すると考えられるが,筆者の視点は恐らく後者に属するであろう。結論は至極単純で,従来のものの反復にすぎぬが,視野は拡がるかもしれない。
取り上げる症例は三十代半ばで発症した対人恐怖だが,症例の具体像に入る前に,対人恐怖についての筆者の考えを少しく述べておこうと思う。
「現代の子供—心身の発達とその病理」という統一主題のもとに,筆者に与えられた課題は「子供の心の発達における両親の役割」である。この課題は様々な視点から論じ得るし,そして事実論じられすでに論じ尽くされた観がなくもないが1,2),筆者はこれを大人の中に潜む子供の問題として,夢,昔話,遊びの観点から大人の症例を分析し,結果として父母の役割・機能を推論しようと思う。視点には対象を視る角度と対象からの距離の二つが合意されていて,視る角度は新たな側面の発見に,距離は細部の明細化と視野の拡大による部分と全体の統一性に寄与すると考えられるが,筆者の視点は恐らく後者に属するであろう。結論は至極単純で,従来のものの反復にすぎぬが,視野は拡がるかもしれない。
取り上げる症例は三十代半ばで発症した対人恐怖だが,症例の具体像に入る前に,対人恐怖についての筆者の考えを少しく述べておこうと思う。
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