文献詳細
研究と報告
文献概要
抄録 精神分裂病患者の行動学的特徴に関する研究は多いが,それに反し方法論的な限界のために内的(認知的)世界についての研究は乏しい。しかし最近の認知心理学は内的世界を直接的に表出させる方法を種々案出し,精神医学がその方法を応用することを可能とした。本報告は認知心理学的方法(認知地図検査)により分裂病患者の内的世界(入院病棟の空間的知識)を調べたものである。対象は分裂病群19名(妄想型分裂病7名,非妄想型分裂病12名),感情病群9名および正常群28名であった。病棟の全31区画は,認知地図上での表現により3領域,確定領域(位置と名前が正確),潜在領域(存在は示されているが,名前がないかあっても不正確)および非領域(まったく存在が示されない)に分けられ,それぞれ得点化された。確定領域および高確定化領域の広がりとその分布には,妄想型分裂病,非妄想型分裂病,感情病および正常の4群間で差がみられ,両分裂病群では集団を回避し,感唐病群では逆に集団に帰属しようとする心理的特徴が浮き彫りにされた。
掲載誌情報