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文献詳細

雑誌文献

精神医学28巻3号

1986年03月発行

文献概要

研究と報告

「自分が『菌』を播いて他人に咳をさせてしまう」と訴える1例—自己漏洩体験の成立に関する一考察

著者: 関根義夫1

所属機関: 1国立武蔵療養所

ページ範囲:P.259 - P.265

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 抄録 「自分が『菌』を播いており,そのため自分の行く先々で他人に咳をさせてしまう」と訴える初診時24歳の男性。その体験は思春期妄想症あるいは自己漏洩症状群に特徴的といわれる構造を有していた。その体験の成立過程は,病者の陳述をもとにして4段階に分けられた。特別な知覚対象に主体が拘束される第1段階,関係性の妄想知覚が成立する第2段階,「自己から周囲へ」という関係の方向性が確信される第3段階,そして体験全体への意味づけがなされる第4段階である。そして本症状群に特徴とされる「自己から周囲へ」という関係の方向性が確信される第3段階で本症例の体験が塞本的に成立した,と考えた。また本症例では自己から漏洩するものが「菌」であると訴えられたが,これは他者との関係性において「視線恐怖」等の場合に比しより間接的,媒介的であり,この点,直接的,無媒介的である「視線恐怖」等の場合よりも病態が重篤であると推測された。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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