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文献詳細

雑誌文献

精神医学28巻4号

1986年04月発行

文献概要

研究と報告

精神分裂病における概念操作の崩れについて—Piaget心理学に沿って

著者: 更井正和1 松永秀典2

所属機関: 1大阪逓信病院精神科 2大阪府立病院精神神経科

ページ範囲:P.395 - P.402

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 抄録 発達心理学に依拠して言語の発達をsignal(信号),symbol(象徴),sign(言語)の3段階に分け,前概念期(Piaget)では象徴機能が思考の重要な原理となるとともに,思考は知覚に影響されやすいことを述べ,これを知覚化-象微化と名づけた。そして,対照群,神経症群,分裂病群で知覚化-象徴化傾向の有無を質問紙法で調べた。一方,症状の評価点と知覚化-象徴化傾向との相関も調べた。その結果,対照群と神経症群とは知覚化-象徴化傾向に有意差なく,分裂病群はこれらの2群と比べ知覚化-象徴化傾向が有意に強かった。これは分裂病者の日常の思考形式の崩れを示すと考えられた。また,知覚化-象徴化傾向とテスト実施時の自閉,観念連合弛緩,幻覚および症状の総合評価との間に有意の相関を得たが,増悪時の症状とは有意の相関をみなかった。このことから,分裂病の増悪時は知覚化-象徴化の過程が抽象的概念的思考より相対的に優勢になると考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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