文献詳細
短報
精神分裂病とHLAとの連鎖及び相関(第1報)
著者: 中村道子1 柴田洋子1 五島寛23
所属機関: 1東邦大学医学部精神神経科学教室 2東京医科歯科大学難治疾患研究所人類遺伝学部門 3現在:九州大学生体防御医学研究所遺伝学部門
ページ範囲:P.451 - P.454
文献概要
HLA抗原系はヒトの主要組織適合抗原系であり,HLA遺伝子複合体は第6染色体短腕上の約1.6センチモルガンの間にある。
種々の疾患とHLAとの相関,および連鎖については近年盛んに研究がなされ,注目を集めてきている11)。疾患とHLAとの<相関>では,血縁関係を認めない患者集団におけるHLA対立遺伝子の頻度を問題とし,これが健康対照群のそれと比較してどれほど偏っているかを解析する。一方,疾患とHLAとの<連鎖>とは疾患発症遺伝子が第6染色体短腕上のHLA座のごく近傍に存在するため,家系内で疾患発症遺伝子と特定のHLAハプロタイプが同時に遺伝する現象を示す。
精神分裂病とHLAとの関係についても各国で研究され,いくつかの報告がHLAと精神分裂病との相関についてなされてきている3,4,6〜9)。わが国においても浅香らの報告1,2)があり,136名の日本人の精神分裂病患者において,A9(Aw24),A10(A26),Bw54抗原が分裂病群において有意に高く,B40が低いという結果が得られている。
精神分裂病とHLAとの相関のメカニズムとして,分裂病発症に主要効果を有する遺伝子(major gene)と相関の認められたHLA遺伝子とが連鎖不平衡にある場合や,そのHLA遺伝子そのものがmajor geneである可能性をあげることができる。HLAと分裂病との連鎖についての研究は現在までにTurner13),McGuffinら10)によって報告されている。
我々はHLAと日本人の分裂病との連鎖についてaffected sib pair method(発症同胞対法)5)を用いてこれを検討した。また我々の対象患者におけるHLAと精神分裂病との相関についても検討したので,報告する。
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