研究と報告
精神分裂病にみられる仮面性について
著者:
小見山実1
白石弘巳1
大宅恵子1
久山裕司1
所属機関:
1東京医科歯科大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.491 - P.498
文献購入ページに移動
抄録 われわれは分裂病老に「仮面をかぶる」という態度を認めることがある。それは「仮装をする」,「化粧をする」,「演技をする」などの行動としてあらわれてくるものである。この仮面化は「態度をとる」という点でわれわれの反省能力や人格にかかわる問題であり,したがって臨床的に病者は単純分裂病もしくは内省型の近くに位置すると思われる。ところで病者が仮面をかぶるさい自己を隠す機能が優勢で,仮面と同化することがないから,<異化的仮面性>というのがふさわしく,そのため病者は役割をとれず,また矛盾した二重の自己体制が形成されて自己解体する危険もはらんでいる。一方,仮面は表現,演技的機能とも結びついており,病者は仮面劇,「自己を隠しつつ規則のある遊び」をすることができ,それによって自己を保持し,行動しうる「アソビ」の空間を獲得しうると思われる。さらに仮面化とは逆の脱仮面化の過程も分裂病者に認められ,それは独自の創造を生みだすものである。