研究と報告
男性性器自己損傷の3例—文献的展望
著者:
兼谷俊1
柳沼均1
兼谷啓1
所属機関:
1太田綜合病院精神科
ページ範囲:P.499 - P.504
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抄録 男性性器自己捐傷の3例を報告した。第1例は22歳時,鎌で陰茎を完全に切断,第2例は,26歳時,鋏を使って陰嚢を切開し,左睾丸,副睾丸を摘出,第3例は28歳時,鋏で陰茎表皮を完全に剥離したものである。3例とも,長男で第一子,発症後10年以上を経過し,現在も入院中の精神分裂病者で,両親は健在。その生育歴や家族歴に特徴的な精神医学的所見は認められなかった。比較的平静な状態で自傷が行われたが,当時,第1,2例には命令的幻聴があり,第3例には宗教的妄想があったことなどから,これらの行為は,精神分裂病に基づく幻聴や妄想によって遂行されたと考えたほうが,より妥当のように思われた。また,標題について,精神科医によるまとまった報告例は,我々の知る限りでは,本邦では皆無であり,精神病理学的考察が為されているものもみられないところから,英語圏の交献を中心に,文献的展望を試みた。