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文献概要

研究と報告

Pick病の亜鉛について—亜鉛仮説の再検討

著者: 小林一成2 池田研二2 小阪憲司12 江波戸挙秀3

所属機関: 1東京都立松沢病院精神科 2東京都精神医学総合研究所神経病理 3都立衛生研究所微量分析研究科

ページ範囲:P.519 - P.524

 抄録 Pick病の病因を亜鉛の過剰にあるとするConstantinidisおよびTissotの亜鉛仮説の再検討を行った。Timm法による海馬における亜鉛の分布は終板と移行帯に局在しており苔状線維終末の分布と一致し,光顕レベルで見ると亜鉛顆粒は錐体細胞の突起に密に存在し,電顕レベルでは苔状線維終末いわゆるgiant buttonsのシナプス小胞に特異的に局在していた。その染色程度はPick病例において強い陽性を示したが,Timm法は染色性が不安定で定量性に欠けるため,高周波誘導結合アルゴンプラズマ発光分析法(ICP法)を用いて血液中および脳内亜鉛濃度を測定し,Alzheimer型痴呆(ATD)および正常対照老人と比較検討した。Pick病群(3例)における亜鉛濃度は海馬をはじめとして脳内どの部位においても,また血液中においても,ATD群(4例)や対照群(4例)と比較して有意な上昇はなく,Constantinidisらの亜鉛仮説を支持出来なかった。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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