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文献詳細

雑誌文献

精神医学28巻5号

1986年05月発行

文献概要

研究と報告

睡眠導入剤Flunitrazepamにより健忘を来した1症例—薬物の血中濃度と記憶テストよりみた記憶障害との関連について

著者: 多田幸司1 渡辺治道1 石綿元1 坂井禎一郎1 武村信男1 小原由子2 諸治隆嗣3

所属機関: 1日大板橋病院精神神経科学教室 2日大板橋病院神経機能検査室 3(財)東京都精神医学総合研究所

ページ範囲:P.553 - P.558

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 抄録 4mgのflunitrazepam服用後一過性の部分健志を呈した症例に対し,再投与による実験を行った。すなわちflunitrazepam服用時と非服用時の2回に渡り記憶テスト,脳波および聴性脳幹誘発反応(ABSR)による検査を行い,服薬時にはflunitrazepam(FNZP)とその主要活性代謝産物である1-desmethylflunitrazepam(DFNZP)の血中濃度を高速液体クロマトグラフィーにて測定した。記億テストでは,薬物の血中濃度がFNZP 15ng/ml,DFNZP 4ng/mlまでの範囲にあるときは服薬前に記銘した単語の再生,および即時再生能力は比較的よく保たれていたが,この時点で記銘した単語の12時間後の再生は著しく障害されており短期記憶から長期記憶への固定化の障害が示唆された。また前述の濃度を超えるとA・B・S・R波形に変化が生じ感覚入力段階での障害が推測されたが,この時点では短期記憶,長期記憶からの呼び出し能力も障害されていた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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