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短報
初老期痴呆例において抗うつ剤により誘発された遷延性せん妄状態に対するThyrotropin-releasing Hormone Tartrateの効果
著者: 武者盛宏1 福田一彦1 小田代司1 石井一1 衛藤俊邦1 上埜高志1 後藤裕1 近藤等1 田中文雄1
所属機関: 1東北大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.574 - P.577
文献購入ページに移動痴呆の初期症状や合併症状として抑うつ状態はしばしば出現する10)。また初老期以後ではせん妄状態がさまざまな心身の負担により発生しやすい15)。とくに脳器質性の変化のあるときは長引く傾向があり,治療や介護上困難な場合も多い。その上,この3つの症状は互いに移行し,横断的には鑑別が難しく経過をみて判断せざるを得ないときもある4,10)。
我々は抑うつ状態で発症した初老期痴呆患者に少量の三環系抗うつ剤を投与したところ,2度にわたり遷延化したせん妄状態が誘発された例を経験した。この状態は休薬や意識障害治療剤によってもおさまらずthyrotropin-releasing hormone酒石酸塩(TRH-T)の静注を試みたところ効果が得られた。せん妄誘発のメカニズムとTRH-Tの効果との関連を考察し,併せて本剤の応用可能性について述べた。
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