研究と報告
慢性精神分裂病患者の描画における構成障害
著者:
横田正夫1
依田しなえ2
宮永和夫1
高橋滋1
町山幸輝1
所属機関:
1群馬大学医学部神経精神医学教室
2慈光会病院
ページ範囲:P.621 - P.627
文献購入ページに移動
抄録 これまで様々な立場の研究者が精神分裂病患者の描画から患者の内的世界を解釈しようと試みてきた。最近の児童描画研究者は,単純な課題に対する描画的解決から児童の内的世界を捉えることを試みている。われわれはこのような児童画研究者たちの方法を参考に,分裂病患者の内的世界を調べた。対象患者は発病後5年以上経過し,精神病院に1年以上入院中の慢性分裂病患者72名で,正常対照者は看護学生69名であった。使用した描画検査は「草むらに落とした500円を捜している自分」を描かせるもので,「草むらテスト」と命名された。分裂病群においては,「自分」と「500円」の関係の表現では.「自分」を直立に描き,「自分」と「500円」を並列し,人間の動作によって両者を関係づけられなかった。「自分」と「草むら」の関係の表現では,「草むら」を「自分」の上下左右のいずれか一方に,しかも重なりを避け空白をおいて描画した。これらのことは分裂病患者の描画構成障害を示している。また分裂病群では「自分」,「500円」および「草むら」の3要素は省略されることが少なく,それら3要素以外の対象物が描画されることも少なかった。これらのことは分裂病患者の心的自由度の乏しさを示唆する。