文献詳細
文献概要
研究と報告
Somatoparaphrenia(personifizierende Anosognosie)の1例
著者: 臼井宏1 浅川和夫1
所属機関: 1日本大学医学部精神神経科
ページ範囲:P.771 - P.779
文献購入ページに移動 抄録 症例は42歳,精神神経疾患の既往のない右利きの女性で,突然左片麻痺と意識障害で発症した。脳内出血と診断され,直ちに血腫吸引除去術が行われたが,第3病日より左片麻痺の否認が出現し,第9病日より第60病日頃まで患肢を他人とみなした。意識水準は変動し,左同名半盲,左の(とくに深部)知覚障害,左半側空間無視,左半側身体認がみられ,健忘,作話,挿間性夢幻状態が認められた。
麻痺側の人格化は右半球機能の単なる欠落症状の結果とも,医師-患者関係の産物と考えにくい。それは,右半球の病巣により生じた左半身の欠陥を無自覚のまま,自己の身体空間像と外界との関係を知的に理解しようと努める結果生ずる,左半球による判断の誤りと考えられる。つまり,人格化は言語機能の保持されている左半球の産物であり,左半球損傷による右片麻痺に対する人格化が例外的なのはこのためと考えられる。
麻痺側の人格化は右半球機能の単なる欠落症状の結果とも,医師-患者関係の産物と考えにくい。それは,右半球の病巣により生じた左半身の欠陥を無自覚のまま,自己の身体空間像と外界との関係を知的に理解しようと努める結果生ずる,左半球による判断の誤りと考えられる。つまり,人格化は言語機能の保持されている左半球の産物であり,左半球損傷による右片麻痺に対する人格化が例外的なのはこのためと考えられる。
掲載誌情報