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単一精神病論とその臨床的意義(前篇)
著者: 諏訪望1
所属機関: 1埼玉医科大学神経精神科センター
ページ範囲:P.858 - P.869
文献購入ページに移動単一精神病論は,現代の精神医学においても,なおその底辺で静かな動きを続けている。そしていまでは,主として「内因性単一精神病」が論議の対象として取り上げられるのが趨勢とみなされる。ところで,いわゆる内因性精神病の分野では,Kraepelinの二分法Dichotomieによる疾患単位が依然として主導理念として支配的な地位を保ってつる反面,臨床の場においては,必ずしもそれとは相容れない実態に遭遇することが日常しばしば経験される。しかも,このような矛盾にいかに対処すべきかということが,すべての精神科医にとって最大の関心事であることも事実である。
著者が内因性単一精神病について特別の関心を懐くようになったのは,1963年に「非定型精神病の概念」33)という小論をまとめたときのことである。それは,この二つの概念はいずれも内因性精神病の二分法を背景として発展したもので,両者は密接な関係にあるからである。もちろんこの場合,「単一」も「非定型」もともに「内因性」の枠内で取り扱うということを前提条件としておかないと,問題の混乱を来たすことになる。
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