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文献詳細

雑誌文献

精神医学28巻8号

1986年08月発行

文献概要

研究と報告

透明中隔欠損を伴ったBinswanger型脳血管性痴呆の1例

著者: 井関栄三16 天野直二1 横井晋1 金子善彦2 斉藤惇3 関英雄4 長谷川保5

所属機関: 1横浜市立大学精神神経科 2神奈川県立芹香院 3神奈川県立せりがや園 4藤沢市民病院 5曾我病院 6現:常盤台病院

ページ範囲:P.937 - P.941

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 抄録 症例は,64歳の女性で,50歳代に発症し,進行性の精神神経症状を呈して,人格荒廃を伴う高度の痴呆をきたし死亡した。剖検では,大脳白質の広範な萎縮と脳室の強い拡大が認められ,また透明中隔の完全欠損を伴ってつた。組織学的には,大脳白質を中心としたびまん性の脱髄と多発性の小梗塞巣が認められ,白質小動脈は高度の硬化性変化を示していた。本例の様に,臨床的にAlzheimer型老年痴呆と脳血管性痴呆の鑑別困難な症例で,病理学的にprogressive subcortical vascular encephalopathyを呈する例は少なからずみられる。これらを臨床病理学的な診断名として,Binswanger型脳血管性痴呆と呼んで区別することは,正しい診断と治療の上で有用であることを指摘した。また本例の透明中隔欠損は恐らくは先天性のものであり,精神神経症状の進行とは無関係であると考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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