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文献詳細

雑誌文献

精神医学29巻10号

1987年10月発行

文献概要

展望

半球機能の統合における動的不均衡—その多様性と精神疾患における重要性—第1回

著者: 丹羽真一2

所属機関: 1 2東京大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.1024 - P.1031

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Ⅰ.構造的左右差と動的過程の左右差
 神経心理学の分野では,脳機能の動的な捉え方が重要な役割を果たして来た。19世紀にはこうした捉え方は全体論と称される学派に統合されたが,全体論はフローレンス(1795〜1869)の実証的な研究にその源を発している。フローレンスは鳥を使った脳組織の部分的切除実験で,個々の領域は特定の役割を持つと共に全体にも影響を及ぼしているので,どの領域を切除してもあらゆる領域に障害が及ぶと推論した。この動的な見方は脳破壊によるネズミの学習障害は,破壊した脳組織の量に反比例すること(量作用[mass action]),および破壊部位による機能障害の差はないので詳細な破壊部位は重要ではないこと(等能性[equipotentiality])という根拠から,量作用と等能性の原理を提唱したラシュリー(Lashley,192951))に受け継がれた。ソビエトにおいては動的な捉え方が神経生理学と神経心理学の発展のうえで主流をなしており,その最高峰はルリアの研究(Luria,197354))である。「複雑な中枢過程には広い領域の活動が統合されており,その過程の重要性は成熟にともなって相対的に変化する」という「機能系」の概念は,ルリアによって広く普及したものである。
 西欧の神経心理学においては,構造的に固定した過程に信頼を置く厳格な局在論が,有力な潮流となっている。左半球の局所的損傷と言語障害の関係についての1861年のブローカの発見や1874年のウェルニッケの発見などから,局在論の実証的基礎づけが始まった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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