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研究と報告
精神分裂病患者における病棟の空間認知と親密感
著者: 横田正夫1 町山幸輝1
所属機関: 1群馬大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.1147 - P.1155
文献購入ページに移動 抄録 本論文は2つの研究からなり,研究1では精神分裂病患者の空間認知について,研究Ⅱでは分裂病患者の空間の感情的体験について検討した。研究Ⅰでは対象はDSM-Ⅲの診断基準を満たす分裂病患者6名,医師(正常者)5名であった。各被験者によく知られた病棟内5場所間の距離を推定させ,その評定値からMDSCALによって空間的布置を求めた。分裂病患者,正常者の空間的布置はいずれも現実のものに近似し,分裂病患者では一部に歪みはあるものの正常者とほぼ同様な空間認知ができていることが示された。研究Ⅱでは対象はDSM-Ⅲの診断基準を満たす分裂病患者14名,分裂病患者以外の入院患者(非分裂病患者)8名,看護婦(正常者)10名であった。各被験者に病棟内の7場所間で親しさについて一対比較させた。分裂病患者,非分裂病患者,正常者の3群別に一方の場所が他方の場所より親しめる確率を求め,ThurstoneのケースⅤの解法によって尺度値を求めた。その結果,分裂病患者では病棟内の場所に親しみの感情をもちにくく,場所を親しさによって区別しにくいことが明らかとなった。以上研究Ⅰ,Ⅱより分裂病患者では場所をよく知っていることとそこに親しみの感情をもつことが乖離していることが示された。
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