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文献詳細

雑誌文献

精神医学29巻11号

1987年11月発行

文献概要

研究と報告

重大事件を起こした精神障害者の治療と社会復帰—分裂病患者を中心に

著者: 中谷真樹1 功刀弘1

所属機関: 1山梨県立北病院

ページ範囲:P.1163 - P.1169

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 抄録 今日,精神障害者の起こした重大事件に対して,社会的な側面からは様々な意見が論じられているが,それらの患者が事件を起こすに至った原因である精神症状に対する治療やその後の治療経過についての報告は少ない。今回,我々は山梨県立北病院において1985年内に治療した患者のうち過去に殺人事件を起こした10症例と重大な傷害事件を起こした6症例の計16例のその後の治療経過について調査し検討を加えた。
 症例の大半は精神分裂病の症状から事件を起こしたものと鑑定され,本院に措置入院となったものであるが,本院外来での治療中に事件を起こしたのは,過去30年間で傷害の2例のみであった。事件に結び付いた精神症状の発現は,通院の中断や不規則な服薬の後に現れたものが多かった。事件後の経過は,社会生活回復維持,回復不全,復帰困難の3群に大別された。現在外来通院治療で維持されている患者群では,1)事件後の治療により精神症状は消退し,2)病識がつき事件に対する批判力を持ち,3)家族やケースワーカー等周囲の支援体制が整っており,4)規則的な服薬の習慣があった。維持群のうち,半数以上の例で継続的,あるいは一時的にデポ剤を併用していた。一方,入院中の症例でこれらの点について検討したところ,不十分であるものが多かった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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